第102回全国図書館大会 東京大会(第13分科会 利用教育)の開催報告
館種をこえた情報リテラシー教育の枠組みづくりに向けて
─先駆的事例から考える図書館の新しい役割─
多用な対象者に対する多様なアプローチ(仮題)
春田和男(東京家政大学)
第13分科会(利用教育)では,2016年10月16日,青山学院大学 青山キャンパスにおいて,標記のテーマで,趣旨説明,講演,報告,事例紹介を行ったのち,グループワークを行った。当分科会には,40名以上が参加した。以下,本記事では敬称を省略する。
- 趣旨説明:野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部)「館種をこえ
た情報リテラシー教育の枠組み―試(私)論を含めて―」
図書館における情報リテラシー教育に関する取り組みには,1)各館の「基準」,2)館種・地域などの「指針」,3)図書館界としての「枠組み」がある。
これまで日本では,1)と2)の取り組みは行われているが,3)の取り組みはあまり行われていない。
3)の取り組みを行うにあたって,生涯学習(発達・活躍)の視点から,各館種間の関係と,図書館以外の情報環境を図で示して,解説を行った。 - 講演:天野由貴(椙山女学園大学図書館)「高大接続する学力―情報
リテラシーのカギは問う力とレポートにあり!!」
大学生のレポートの作成事情,学校図書館における調べ学習,読む技術と書く技術,批判的思考力と問う力等について説明した。
情報リテラシー教育を行うにあたり,1)問いをつくるプロセスに時間をかけること,2)アウトラインで組み立てること,3)結論から文章を構成することを指摘した。 - 報告1:中山美由紀(東京学芸大学附属小金井小学校)「小大連携の試みと『先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース』」
東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会では,幼,小,中,高,特別支援の各学校の多様な教科で図書館を活用した授業実践を見ることができるサイトとして,「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」を2009年から開設している。
小学校での様々な授業実践のほか,小学生が大学の附属図書館に行くという事例も紹介した。 - 報告2:石川敬史(十文字学園女子大学)「日本図書館協会中堅職員 ステップアップ研修(2)『情報リテラシー支援』を通して公立図書館 における情報リテラシー支援を考える」
標記の研修の概要を紹介したのち,公立図書館における情報リテラシー支援がめざすものとして2つのキーワードを挙げた。
1つは,地域資源を活かす仕組みづくりである。市民に情報リテラシー支援が届いている か等の問いを提示した。
もう1つは,リテラシーの捉え方である。機能的リテラシーと批判的リテラシーの違い等に言及した。 - 事例紹介:春田和男(東京家政大学人文学部)「公立図書館の実践事 例集に見る情報リテラシー教育(支援)の取り組み」
『図書館実践事例集~人・まち・社会を育む情報拠点をめざして』は, 都道府県から推薦があった公立図書館での様々な取り組みを文部科学省 が取りまとめたものである。
全112の事例の中から,情報リテラシー教育(支援)に取り組んでいる愛媛県立,京都府立,鳥取県立の図書館を紹介した。