第100回全国図書館大会第23分科会(利用教育)の開催報告

図書館利用教育の実践力 : 委員会創設25周年,次に向けての展望を拓く

天野由貴(椙山女学園大学図書館)

委員会創設25周年の節目に当たる今大会(2014年11月1日開催)で,図書 館利用教育委員会のセッションは,次の25年に向けての展望を拓く機会と なった。当日の会場(明治大学駿河台キャンパス)は,空席がない満員の 状態で始まり,参加者の期待度の高さを示していた。

基調講演およびコーディネータを務めた仁上幸治氏(図書館サービス計画 研究所代表)により,この25年で図書館利用教育はどこまで進化したかと いう現状分析から次の25年に向けての問題提起があった。この25年間にお ける進化は,5名の講師の講演および実践報告により明らかにされた。内 容については,和田佳代子氏(昭和大学)による医学図書館における図書 館利用教育の最先端動向,鈴木恵津子氏(東京家政大学図書館)による大 学図書館における情報リテラシー教育支援の実践,長澤多代氏(三重大学 附属図書館研究開発室)による大学教員が行う情報リテラシー教育, 高橋みち子氏(千葉県八街市立図書館)による公共図書館での児童に向け ての情報リテラシー教育,日向良和氏(都留文科大学情報センター)によ る司書教諭養成講座における実践など,さまざまな館種の図書館における 情報リテラシー教育の実践が報告された。

この25年間での進化を客観的に分析するとともに,これからの25年間でど のように発展,深化を図るのかについて議論することで,フロアー参加者 とともに情報リテラシー教育の将来のデザインを会場全体で共有した。今 までの歴史的背景と発展を知ったうえで,情報リテラシー教育は,今後ど のように体系的になるのか。大学図書館におけるガイドラインは示されて きたものの,他の館種におけるガイドラインへの展開や,ひとりの利用者 が生涯学習における自立した学習者になるためにも,どのように館種を越 えて情報リテラシー教育を行うのか。パネルディスカッションにおいて, さまざまな館種の参加者から積極的な発言があり,今後の25年に向けての 方向性を確認することができた分科会となった。これからの利用教育の新 たな一歩が刻まれた貴重な機会であった。