文献紹介3

プレゼンはシンプルで行こう!禅の精神を生かしたアプローチで書かれた解説書

戸田光昭(駿河台大学名誉教授)

文献:
『プレゼンテーションZen―プレゼンのデザインと伝え方に関するシンプルなアイデア―』
Garr Reynolds著 熊谷小百合訳
ピアソン・エデュケーション,2009年9月発行 B5判 255p. 2,300円(税別)

序文(要約)はPowerPointを使ったプレゼンテーションの見本として書かれていることに,最初の驚きを感じた。「なぜこの本を買うべきなのか」というテーマでスピーチする場合のプレゼンテーション・スライドで,その趣旨は「短い,シンプル,読みやすい,魅力的」である。

本書の精神は「禅」と共通するものがある。「美学,集中力,一体感」などに関する禅の理念と本質は,プレゼンテーションをはじめとする日常的な活動にも応用可能であるということから,書名にZenという文字が入っている。

第1部では本書の真髄を語っており,それは,(1)素晴らしいスライドプレゼンテーションは日本の駅弁(幕の内弁当)に学ぶとよい。
(2)本書は単にアプローチを示すものであり,そのデザインと実践に至る道はいくらでもある。(3)PowerPointによる死は悪い習慣にある。
(4)プレゼンテーションを上手にこなすことは「脳全体」を使ったスキルである。
(5)マルチメディアを使ったスピーチに必要なのは「物語」を語ることである。
(6)変革のために第一歩は,過去を捨て去ることである。
という6項目のまとめになっている。

第2部では,「準備」として,(1)創造性と制約,(2)アナログ式に計画を練ろう,(3)ストーリーを作り上げる,という3項目に分けて書かれている。

第3部「デザイン」では,(1)シンプルがあることの大切さ,(2)プレゼンテーションのデザイン,(3)サンプルスライド,の3項目について述べている。

第4部「実施」では,(1)完全にその場に集中すること,(2)聴衆と心を通い合わせる,の2項目を述べている。

第5部「次のステップ」では,「長い旅が始まる」として,プレゼン向上法を具体的に説いている。

最終部の「終わりに」では,「結論はない、次のステップがあるのみ」としている。そして,「千里の道も一歩から始まる。」という老子のことばを引いている。

なお,本書のエッセンスをまとめた下記のDVDビデオ版も発売されていて,50分で概要を知ることができる。英語版であるが,日本語字幕が付いている。

“Presentation Zen: The video”, (DVD), New Riders; Voices That Matter (http://www.newriders.com/), 2009.ISBN: 978-0-321-64704-7 US $ 29.99

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