新刊紹介
誰にでも効果のある,情報活用の妙薬としての一服
『文献調査法―調査・レポート・論文作成必携― (情報リテラシー読本) 第二版』毛利和弘著,日本図書館協会,2006.7,214p. 1,800円

 

戸田光昭(駿河台大学名誉教授)

 本書は,2年前の2004年に発行された初版の改訂版である。著者が「はじめに」で書いているように,「情報の陳腐化」に対処するために,隔年刊行をしている。特に,今回の版では,できるだけ最新の情報を入れ,レファレンスツールもかなり強化し,さらに最近特に重要になってきたインターネットで探すデジタル情報源ツールを強化している。文献調査に役立つ内容になっているが,情報内容の変化が激しい分野であるから,新情報に対しては各自が絶えず注視し,取り込む姿勢が重要であることを警告している。

『情報リテラシー読本』という副書名のついた本書は,学生の自学自習用,図書館の参考業務(レファレンス担当)の文献調査の手引き,図書館利用指導の基本テキスト,ビジネスにおける調査業務の参考図書(ツール)などで利用されることを意図して編纂されている。専門家が使っても役立ち,大学の新入生がひとりだけで使うことができ,図書館業務にも使えるという多目的活用が可能なマニュアルでもあり,しかもレファレンスブックである。

活用事例を具体的に紹介したい。「大きな書店」の代表である「八重洲ブックセンター」のことが知りたいと思って,巻末索引を引いてみる。「や」の所に,見出し語として採用されており,17ページと18ページに掲載されていることが分かる。17ページには,コラム「アルファータイム」の欄で,「一度は行きたい八重洲ブックセンター」として,この大型書店の創業の由来から概要までが,簡潔にまとめられている。18ページの記述は,「インターネットで書店にアクセス」というコラムであり,インターネットから直接注文が可能な書店一覧の中にリストアップされている。また,関西系の大型書店「ジュンク堂」についても知りたい時は,索引で24ページに掲載されていることを知ることができる。東京池袋にある10階建てのビル全体が書店であり,「全ての流通本が収容可能な書店」という見出しが付けられているが,神戸・三宮に本店がある関西系の本屋であるなどの記事は見られない。

次に,本書の構成から全体を概観してみよう。全体が7つの部分からなっていることを,目次からみることができる。

最初は,「1.本の探し方である」である。(1)総合的に本を探す,(2)参考図書を探す,(3)官公庁図書・資料を探す,(4)翻訳図書を探す,(5)全集・叢書を探す,(6)書評された図書を探す,(7)主題から文献を探す,として7項目に分かれ,それぞれを具体的に解説し,事例紹介をしている。

「2.雑誌記事の探し方」では,具体的な索引ツールごとに,解説と事例紹介をしている。それらは,(1)NDL-OPAC雑誌記事索引,(2)『雑誌記事索引―人文・社会編』,(3)『月刊雑誌記事索引(JOINT)』,(4)『総合雑誌記事索引』,(5)『全国短期大学紀要論文索引』,(6)『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』,(7)『社会科学論文総覧』,(8)『明治・大正・昭和前期 雑誌記事索引集成』,(9)『日本雑誌総目次要覧』,(10)『科学技術文献速報』,(11)『政府定期刊行物目次総覧』,(12)”Social Sciences Citation Index”,(13)『論文集内容細目総覧』,(14)『学会年報・研究報告論文総覧』,(15)『人文・社会翻訳記事論文索引』の15項目である。これらの中には,既に廃刊になったものも含まれている。しかし,情報を探す人には,現在発行されているのか,あるいは既に廃刊になってしまったのかなどということは,問題でない。このような新旧にとらわれない取り上げ方は重要なことである。

「3.新聞記事の探し方」では,最初に「新聞情報調査機関概要」があり,国内の3機関と海外の2機関が紹介されている。新聞は特別な資料で,そのバックナンバーも含めて所蔵している機関は限定されており,新聞の現物がなければ,索引も作れないし,原文を読むこともできない。そこで,このような新聞資料センター的な機関が重要になるのである。次に,具体的な検索ツールを中心にした解説と事例紹介がある。それらは,(1)新聞縮刷版(各紙。発行していない新聞もある),(2)『朝日新聞記事総覧』,(3)朝日新聞オンラインサービス「聞蔵Ⅱ」,(4)読売新聞オンラインサービス「ヨミダス文書館」,(5)日経テレコン21,(6)『読売ニュース総覧』,(7)『毎日ニュース事典』,(8)『会社・産業ニュース索引』,(9)『明治ニュース事典』,(10)『大正ニュース事典』,(11)『昭和ニュース事典』,(12)新聞集成(新聞から主要な記事を選択し,そのまま転載したもの),(13)『国際ニュース事典 外国新聞に見る日本』,(14)新聞全集(新聞そのものを集め,復刻したもの),(15)外国の新聞記事「オンラインサービス」の15項目である。

「4.どのような種類の新聞・雑誌があるか調べ,その所蔵館を知る」では,8つのツールを紹介している。それは,(1)『雑誌新聞総かたろぐ』,(2)『日本雑誌総覧』,(3)”Ulrich’s International periodi-cals Directory”,(4)NACSIS Webcat,(5)『学術雑誌総合目録』,(6)『明治新聞雑誌文庫所蔵目録』,(7)国立国会図書館所蔵目録,(8)『雑誌名変遷総覧』である。

「5.人物から文献を探す」では,主要な10のツールを紹介している。(1)『現代日本執筆者大事典』,(2)『現代日本執筆者大事典77/82』,(3)『新現代日本執筆者大事典』,(4)『現代日本執筆者大事典』第4期,(5)『日本人物文献目録』,(6)『人物文献目録』1980~,(7)『人物研究・伝記評伝図書目録』,(8)『研究者・研究課題総覧』,(9)『伝記・評伝全情報』,(10)『年譜年表総索引』である。

「6.人名情報の探し方」では,『人物レファレンス事典』,『東洋人物レファレンス事典』,『西洋人物レファレンス事典』,『外国人名レファレンス事典』などを紹介している。

「7.事実・事項調査のための情報源-書誌以外のレファレンスツール」では,(1)主要参考図書一覧,(2)CD-ROM版参考図書一覧,(3)インターネットで利用できる文献調査の3部に分けて,具体的に説明している。

巻末には,「文献調査に役立つ主要書誌類CD-ROM一覧」と「調査に関する演習問題」,さらに索引がついており,本書を使っての自学自習者に配慮がされている。

さらに2年後には,第3版が出版されることを期待したいが,その際に,ぜひ「索引」の充実をお願いしたい。巻末の索引は書名と事項を中心としたものであるが,事項の方は,固有名詞に近いものが重点的に索引語として採用されているおり充実しているのに,普通名詞の事項索引が不足している。また,索引語の本文中の表示をゴシック体で表すなどの工夫を今回から取り入れていることは高く評価できるが,これをさらに徹底すると,マニュアル的な使用にも,教科書(自学自習を含む)としての利用にも大変便利になると考える。これらの点を考慮した改訂をぜひお願いしたい。

トダ・ミツアキ


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