全文は印刷用PDFをご覧下さい。2011年10月10日
図書館利用教育ガイドライン-総合版:1995年-
図書館利用教育とは、個々それぞれの図書館、また各館種が孤立した形で行えるものではない。各図書館の設置母体はもとより、図書館団体、教育機関等が協力し、総体となって取り組むことにより、始めてその目標を達成することができる。その意味で「総合版」は、大学図書館、学校図書館、専門図書館など、各館種別ガイドラインの共通基盤として位置づけられるものである。
図書館利用教育ガイドライン-総合版-
総論
このガイドラインはすべての利用者が各自の状況に合わせて図書館の活用能力を身に付けられる体制を確立するために、関係者が実施すべき指針である。
1.定義
図書館利用教育とは、すべての利用者が自立して図書館を含む情報環境を効果的・効率的に活用できるようにするために、体系的・組織的に行われる教育である。
2.意義
図書館の活用能力を身に付けることは、人間の成長と自立の大切な要素であり、それは情報化社会・生涯学習社会と言われているこの時代を生きるすべての人にとって欠くことのできない基礎的能力である。また常に成長しサービスを広げていく図書館は、積極的にその利用方法を人々に知らせることにより、その本来の機能を最大限に発揮することができる。
3.対象
現に図書館を利用している、いないに関わらず、すべての利用者である個人またはグループを対象とする。
4.目的・目標
目的・目標は、利用者のニーズと情報利用能力の到達度に合わせて設定するべきで、次の5つの領域が考えられる。
・領域1:印象づけ
各自の情報ニーズを充たす社会的機関として図書館の存在を印象づけ、必要が生じた場合に利用しようという意識を持つようにする。
・領域2:サービス案内
各自の利用する図書館の施設・設備、サービスおよび専門的職員による支援の存在を紹介し、その図書館を容易に利用できるようにする。
・領域3:情報探索法指導
情報の特性を理解すると同時に、各種情報源の探し方と使い方を知り、主体的な情報探索ができるようにする。
・領域4:情報整理法指導
メディアの特性に応じた情報の抽出、加工、整理、および保存ができるようにする。
・領域5:情報表現法指導
情報表現に用いる各種メディアの特性と使用法を知り、目的に合った情報の生産と伝達ができるようにする。守るべき情報倫理を伝える。
5.実施機関
5-1.各図書館が行う。
5-2.図書館関係団体が行う。
5-3.学校教育機関において図書館員と教員とが協力して行う。
5-4.国や自治体が生涯学習支援活動の一環として行う。
6.制度化
すべての人に図書館利用教育を受ける機会を保障するためには、関係機関がこれをその業務のひとつと認識し、組織的に取り組まなければならない。
6-1.各図書館は図書館利用教育を業務分掌に規定し、必要な人的・予算的措置を図る。
6-2.図書館関係団体は各種基準の中に図書館利用教育の項目を設ける。
6-3.初等・中等教育機関の学習指導要領の中に図書館利用教育を的確に位置づける。
6-4.高等教育機関はそのカリキュラムの中に図書館利用教育を位置づける。
7.担当者の養成
7-1.図書館員養成のカリキュラムの中に図書館利用教育法に関する科目を設置し、その理念・内容・指導法を教育する。
7-3.教員養成のカリキュラムの中に図書館利用教育法に関する科目を設置し、その理念・内容・指導法を教育する。
8.研究・開発・普及
8-1.図書館・情報学の研究対象として図書館利用教育を位置づけ、関連学問領域の成果を取り入れ、理論構築、教育方法等の研究を推進する。
8-2.図書館利用教育をテーマとする研究会・研修会を開催する。
8-3.共同利用できる様々なメディアの標準的教材を開発し、図書館利用教育が各学問分野・各レベルで、どの場においても実施できるように、その普及を図る。
9.評価
図書館利用教育の実施状況を把握し評価するために、以下のことを行う。
9-1.各図書館が行う調査・統計や業務報告の項目に図書館利用教育を加える。
9-2.図書館関係団体が行う調査・統計の項目に図書館利用教育を加える。
9-3.学校教育機関が行う自己点検・自己評価の項目に図書館利用教育を加える。
9-4.図書館関連行政機関が行う調査・統計の項目に図書館利用教育を加える。
図書館利用教育委員会
(委員長)
濱田 敏郎(常磐大学)(1989- )
(委員)
青木 玲子(東京ウイメンズプラザ図書館資料室)(1997- )
有吉 末充(神奈川県立神奈川工業高等学校図書館)(1996- )
市古 健次(慶応義塾大学三田メデイアセンター)(1992-1994)
尾田 真知子(北陸学院短期大学ヘッセル記念図書館)(1989- )
片桐 あゆみ(千代田化工建設(株)ライブラリー)(1995-1996)
小林 淳(鎌倉市中央図書館)(1995-1996)
座間 直壮(調布市立中央図書館)(1995)
椎葉 もと子(白百合女子大学非常勤)(1989-1995)
高田 淳子(神奈川県立向の岡工業高等学校図書館)(1995)
戸田 光昭(駿河台大学)(1997- )
仁上 幸治(早稲田大学図書館)(1990- )
野末 俊比古(学術情報センター研究開発部)(1995- )
平久江 祐司(図書館情報大学)(1997- )
松原 修(立命館大学メデイアセンター)(1996)
丸本 郁子(大阪女学院短期大学)(1989- )
毛利 和弘(亜細亜大学)(1989- )
JLA9838 ISBN4-8204-9818-5
図書館利用教育ガイドライン-大学図書館版-
1998年8月発行
発行:社団法人日本図書館協会
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂1-1-10
電話03(3410)6411
このページは次の文献の一部を転載したものです。
日本図書館協会図書館利用教育委員会『図書館利用教育ガイドライン-大学図書館版-』1998年8月,日本図書館協会このページの最終更新日:2001(平成13)年11月27日