日本図書館協会図書館学教育部会の部会長になって
山本順一(桃山学院大学)
図書館学教育部会の会員のみなさまを含む、大学等で図書館情報学の教育研究に携わられている先生方、そしてこの国の広く図書館に関係する方々、さらにはこのウェブページにアクセスしてくださったみなさまにひとこと、仁義をきっておきたいと思います。
志保田務先生の後をうけて、2011(平成23)年度より、日本図書館協会図書館学教育部会の部会長という業界の大役のひとつを引き受けることになりました。アメリカ、イギリスに次いで、世界で3番目に古く、由緒正しい図書館分野の専門的団体である日本図書館協会の一部を構成する当部会は、その名称にもありますように、文献情報を取扱い、利用者に対して彼らが必要としている情報を提供するという専門的職務を担う、図書館司書を中心とする人材の育成を任務とする図書館情報学教育のあり方、教育方法、教育水準等について検討するとともに、わたしたち図書館情報学教育に携わる教員、研究者が備えるべき資質の向上と能力開発にも取組むものであります。
ひるがえって、この図書館情報学教育については、積極的に取組んでいるのは当部会に限られるのではなく、この分野の代表的研究団体である日本図書館情報学会においても、また関西に拠点をおく日本図書館研究会においても、恒常的に、しかもかなりの時間とエネルギーを図書館情報学教育の検討に投入されています。当部会を含む関係学協会の過大とも見える経費と時間とマンパワーのこの重複投資は、いささか哀しく、滑稽な感じさえいたします。ほかの学問領域においても、当然に接続する専門職、実業の世界に人材を育成、輩出しているわけですが、なぜこの分野は、その学問領域の中身、研究自体とその成果を引っさげて、それを正面に掲げる勝負を真っ向から仕掛けることなく、これほどまでにがんばって当該学問の外皮とも思われる人材養成に注力してきたのでしょうか。また、いまもなお注力しようとしているのでしょうか。「図書館や情報センターという‘現場’をもち、そこに役立つこと、なによりも司書養成にこそ、図書館情報学の存在意義(レーゾンデートル)がある」という声が聞こえてきそうです。しかし、現場をもつのは図書館情報学に限られるわけではなく、うえにもふれました通り、ほとんどすべての学問領域がやはりその知識を必要とする現場をもっています。
図書館情報学の分野において、異常なまでに旧式の人材養成教育にこだわるのには構造的な要因がありそうです。図書館情報学の専門学部・学科、司書課程、司書講習の卒業生・履修者の量と質、それに対応する不釣合いなまでに狭隘な雇用市場、図書館法に支えられた司書資格の名目的価値と実質的無価値など、いろいろなことが思い起こされます。図書館情報学教育の特殊性には、アメリカの大学でも問題とされてきましたが、大学のキャンパスにおいて、ライブラリースクールと他の研究科・学部との関係、他の学問領域の研究者と比較した場合の図書館情報学の研究者との能力と活力の水準なども考慮に入れる必要があるかもしれません。
政治的な文脈からは距離をとらざるを得ない当部会としては(まともに授業を行い研究活動にいそしんでいれば、ほかに振り向ける時間はまず生み出せるはずがない、という意味です)、我れを忘れてまで、これまでの自動運動を推力として衰退を続ける日本の図書館業界に一心同体的に運命をともにするわけにはゆかず、歴代の部会長の先生方を中心に蓄積されてきたものを踏まえて、労働の場としての図書館の維持に資するだけではなく、21世紀のデジタル・ネットワーク社会、生涯学習社会が必要とする主体的な個人の育成をめざす図書館情報学教育のあり方、そこで後進を導く責務を負う図書館情報学の教育研究に従事する教員像について、関係学協会との協働をさらに深めつつ、みなさまと一緒に考えてゆきたいと思います。その成果が、やがて法によってではなく、当部会の権威によって、デジタル・ライブラリーとその利用にもかかわる、一定の実効性をもつ規準、ガイドラインとしてまとまり、社会的に機能するようになる日がくることを大いに期待いたします。
(2011/05/22 記)
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