日本図書館協会の見解・意見・要望

2014/07/11

学校図書館法の一部を改正する法律について(見解及び要望)

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2014.7.4

学校図書館法の一部を改正する法律について(見解及び要望)

公益社団法人日本図書館協会


 2014年6月20日、学校図書館法の一部を改正する法律が、衆議院本会議(6月13日)及び参議院本会議(6月20日)でそれぞれ超党派の賛成によって可決され、成立した。学校図書館法が1953年に制定されて以来、何度も法改正の動きがあり、その都度、常に改正の課題は司書教諭の発令とともに学校司書の法制化であった。しかし、1997年の法改正では、学校司書法制化の課題には触れられず、司書教諭の発令に関わる課題のみが改正の対象となった。1997年法改正から2年後の1999年には、2003年4月の司書教諭発令を前にして、それまで継続していた学校司書の配置事業を打ち切るとした地方公共団体が現われ、また文部省(当時)は同年「学校図書館ボランティア活用実践研究指定校事業」を開始した。この当時、文部省が毎年行っていた「学校図書館の現状に関する調査」において、学校司書に関する項目についての調査は行われていなかった。
 文部科学省の実施する「学校図書館の現状に関する調査」において学校司書(調査では学校図書館担当職員の名称)の配置状況が調査項目に加わったのは2005年度(平成17年度)調査からである。その後、調査のたびに学校司書の数は増え続けるが、同時に非常勤職員の割合が増えており、非常勤職員には兼務や有償ボランティアのケースも多く、必ずしも学校図書館の機能を高めることにつながらないなどの問題を抱えている。新たに学校司書配置を決定した地方公共団体も増えているが、近年では、高校においては配置率が下がり、非常勤職員化がみられる。
昨年6月子どもの未来を考える議員連盟総会において、学校司書法制化に向けた法律案骨子案が示され、日本図書館協会は11月7日付で骨子案についての意見と要望をまとめ、関係者に提出するとともに、その内容を公表した。
 今回の改正は、1953年の法制定以来の課題であった学校司書の法制化を内容としている。第六条を新設し「学校司書」の事項をたて、第1項に、「学校には、前条第一項の司書教諭のほか、学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員(次項において「学校司書」という。)を置くよう努めなければならない。第2項に、「国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」ことを規定した。さらに附則として「国は、学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることに鑑み、この法律の施行後速やかに、新法の施行の状況等を勘案し、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」が規定された。条文そのものに本協会の要望書の具体的内容が入ることはかなわなかったが、附則が加わったこと、衆参両委員会での附帯決議、及び審議の過程で、学校司書の配置促進と専門職員としての位置づけ等の議論がなされたことは、昨年6月に骨子案が示されて以降、本協会を含めさまざまな団体が取り組んできた成果と考える。
 本改正案の国会採決にあたって、衆議院で6項目、参議院で7項目にわたる附帯決議がなされた。決議自体は拘束力を持たないが、そこにはこの法律改正によってもまだ残る課題が如実に示されている。
 以下に、今回の法律改正によって新設された第六条と附則、さらに附帯決議及び衆参両院の関係委員会審議の経過等に照らして、今回の改正の意義及び問題点を整理し、本協会の今後の取り組みの課題を提起するとともに国及び地方公共団体等へ強く要望する。

<第六条と附則関係>
1)新設された第六条では、「学校図書館の運営の改善及び向上を図り、(中略) 専ら学校図書館の職務に従事する職員(次項において「学校司書」という。)を置くよう努めなければならない。」となっている。配置については努力義務であり、地方公共団体に配置を義務づけることがなく、本協会が要望してきた“専任・専門・正規の学校司書配置”を実現するうえで大きな課題が残ることになった。また学校図書館法第4条(学校図書館の運営)にかかる業務において、第5条の司書教諭との関係が不明確である。昨年11月に本協会要望書において挙げた、学校司書が学校図書館の「専門的職務を掌る」位置づけにもならなかった。
2)附則において、国は、この法律の施行後速やかに、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等の検討を行い、必要な措置を講じることとなっているが、現行の資格制度には学校司書独自の資格は存在していない。そのため、実際には、図書館法による司書又は司書補の有資格者を採用している地方公共団体が多数あり、また近年では学校司書の採用にあたって、司書資格ないし司書教諭資格所持を要件とする地方公共団体も増えている。この実態をふまえ、図書館情報学を基礎とし、さらに学校図書館で働くために必要な学校教育に関する内容を含んだ新たな学校司書の資格の検討を早急に行う必要がある。さらに、資格のあり方、養成のあり方等の検討にあたっては、現職の学校司書の声が反映されるものとすべきである。

<附帯決議関係>
1)現在の学校司書の配置水準を下げないこと
 学校図書館法に学校司書の配置が明文化されることは、長年の懸案課題の一歩前進であるとする受けとめがある一方で、専任・専門・正規の位置づけとはならなかったことから、現在、地方公共団体の自主的な努力によって学校図書館に専任で専門の職員配置を実現した学校司書はどうなるのかとの懸念がある。現在の学校司書配置の現況は、巡回型と称して複数校兼務の地方公共団体も多い。文部科学省が昨年8月に設置した学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議によって2014年3月にまとめられた「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」(以下「文部科学省協力者会議報告」という。)や衆参両院の関係委員会審議においても、「その実態は多様」だという政府答弁であった。たしかな実態把握を早急に行うとともに、「配置水準」の明確化を行ったうえで、各地方公共団体の現在の配置水準が下がらないような措置が必要である。
2)地方公共団体に対する政府の責務―学校司書の配置の促進
 2012年度から学校司書配置のための地方財政措置が実施されてきた。今回の改正に伴う財政的な裏付けは、現時点ではこの地方財政措置しかない。現在学校司書の配置は、2012年度「学校図書館の現状に関する調査」によれば、全国の小・中学校の半数程度である。政府は、地方公共団体に対して学校図書館の充実とともに学校司書の重要性を周知するよう努めるとともに、この地方財政措置の拡充を速やかに行う必要がある。さらに地方財政措置の対象外となっている高等学校についても、何らかの施策を講じるべきであり、国は、地方公共団体に対し、学校司書の配置促進を促す措置を講じる必要がある。
3)学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境の整備
 2012年度からの学校司書配置のための地方財政措置は年間約150億円、この金額は、週30時間の職員を2校に1名程度配置し、一人あたりの配置単価を年間105万円としている。この財政措置による職員配置は、明らかに非正規職員であり、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境とはなりえない。学校図書館充実のためには、各校について、専任で、かつ資格を持つ専門職員、さらには正規職員での学校司書配置を可能とする財政措置が必要である。
4)政府の責務―学校司書の職の在り方、配置の促進・資質の向上のための必要な措置
 学校司書の職務のあり方については、文部科学省の協力者会議報告において一定の整理がなされている。今後は、学校司書の資質向上のための研修とともに、公共図書館とのネットワーク整備も必要となる。学校司書を配置して有効な学校図書館活用を実現するためには、国が責任をもって、学校司書の職の在り方・配置の促進・資質の向上を図るとともに、学校図書館に携わる課題について広い視野でとりくむことのできる体制づくりを行うことが必要である。
5)司書教諭の配置の促進等
 学校司書が司書教諭との円滑な協力協働関係によって学校図書館運営を行うためには、司書教諭が職務を十分果たせるよう、現在司書教諭の未設置の11学級以下の学校への司書教諭配置等が必要である。
6)司書教諭と学校司書の職務の在り方
 学校司書の職務のあり方について、文部科学省の協力者会議報告及び2009年の子どもの読書サポーターズ会議「これからの学校図書館の活用の在り方等について(報告)」、において、学校司書の仕事が教育にかかわる職であることが明記された。それでは司書教諭の職務のあり方をどう整理するのか、実態を踏まえた検討が必要である。

今回の法改正についての評価はさまざまあろうが、学校図書館に専門職員を置くことを志向し、
学校司書の配置を努力義務として法に明示され、附則において、国が検討し措置を取るべき課題も明示された。国会衆参両院関係委員会における附帯決議の内容を含めて、これらの内容の具体化を着実に実現していくことがこれからの課題であり、その主要なものを以上に提起した。日本図書館協会として、学校図書館の整備・充実に関心を寄せる多くの市民、組織・団体と協力して、その達成に努めたい。


 

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