現在、わが国において情報化社会あるいは生涯学習社会ということが 提唱され、人々の間に情報活用能力の重要性が認識されているかに見えます。 しかし実情はそれが図書館利用能力と結びついているとは言えません。 多くの人々の図書館利用はまだ未成熟な段階にあり、日常生活を始め、 学習、研究、調査等の活動に少なからず支障を来しております。
これは過去において、初等教育、中等教育、高等教育 また社会教育にわたって、図書館利用教育への取り組みが ほとんど組織的になされていなかった結果と考えられます。 人々は基本的人権としての知る権利を充分に保証されていなかった と言えましょう。図書館および教育関係者は、利用教育を実施することにより、 人々の情報面での自立を支援し、知る権利を保証する義務があると考えます。
このガイドラインはわれわれ関係者が、それぞれの立場で その責務を果たす方策を示したものです。図書館関係者はもちろんのこと、 図書館行政担当者、教育関係者の方々には、これを参考にしていただき、 図書館利用能力の一層の向上を推進していただくことを期待しております。 その上で、ご意見、ご提案がありましたならば、ぜひお聞かせいただきたい と存じます。
最後に、このガイドライン策定にあたり貴重なご意見やご提案を いただいた方々、および策定にご尽力をいただいた委員各位、および 作業委員各位に対して深く感謝申しあげます。
図書館利用教育委員会は、1989年12月に日本図書館協会利用者教育 臨時委員会として発足、1993年度に現名称に改称し常設の委員会としての 活動を開始した。以来、図書館界挙げての利用教育への取り組みを目指し、 理論的根拠と実践の指針を提示するガイドライン策定の作業を進めてきた。
1993年度の全国図書館大会で「総則」および「大学図書館版」の素案を 公表した。その後、各種の講演会研究会等で問題提起を行い、同時に 『図書館雑誌』誌上や当委員会の『通信』誌上での討議を含めて 協会会員より多数のご意見をいただいた。
また1994年12月以降、館種別のガイドライン作成を目指して作業委員会を 設置し作業を進めた。そこで提出された館種別の素案を検討・統合をし、 1995年10月に再び全国図書館大会において「総合版」にまとめ発表した。 その後、この「総合版」を各館種の事情に合わせて修正を行い、館種別 ガイドラインを作成した。
「大学図書館版」の原案(抜粋)は1996年6月に『図書館雑誌』誌上に 公表された。それに対して多くの方からいただいたご意見を反映して 作成された最終案は、1997年3月に常務理事会に提出され、さらに検討を 加えられ、1998年4月に正式に承認された。
大学図書館において図書館利用教育の重要性の認識はかなり浸透し、 実施状況もある程度の水準までは至っていると言える。したがって 現状の問題点は従来行われてきた「オリエンテーション」レベルの限界を いかに突破し、一部ではなく全ての利用者をより自立した情報の 使い手とするかという、対象者の拡大と内容の高度化である。最終的には 大学教育のカリキュラムの中にこれを組み込み、全学的な情報教育の 統合化を達成しなければならない。このガイドラインはその第一歩として、 図書館主体で行う図書館利用教育の体系化と組織化を図ったものであり、 これにより大学教育に図書館として積極的に貢献することを 目指すものである。
1.現状の様々な実践上の困難にとらわれず、あるべき理想イメージの 全体像を提示する。
2.このガイドラインの対象とする大学とは、四年制大学、短期大学、 大学院大学、専門学校、大学校等を含む。
3.このガイドラインが想定する図書館利用者は、学部学生に限らず、 大学院生、教職員、その他の大学コミュニティ構成員のすべてが含まれる。
4.用語は、この問題を図書館界全体で検討、推進するために共通理解を 得るための作業言語として選ばれている。全体の整合性・総合性を考え、 これ等が専門用語として定着していくことを願っている。しかし検討を すすめる中で、よりふさわしい用語が提案されれば、それを採用して いきたいと思っている。したがって利用者に対して、また様々な状況の中で、 別の用語が用いられることは当然あると考える。
5.理論の組み立てはACRL (Association of College and Research Libraries: 米国大学研究図書館協会)の情報探索法指導ガイドライン (Guidelines for Bibliographic Instruction in Academic Libraries, 1977) の考え方を参考にし、その基本にある非営利機関の マーケティング (non-profit marketing) の理論を取り入れる。
6.指導目標は、近年の情報環境の急激な変化や日本での社会的な 図書館認知度等を考慮して、ACRLガイドラインの「情報探索法指導」 領域を中心に据え、その前に「印象づけ」(User Awareness)と 「サービス案内」(Orientation) の2領域を追加し、またその後に 「情報整理法指導」と「情報表現法指導」の2領域を追加して、 合計5領域の構成とする。
7.このガイドラインは、全ての図書館が、全目標を一律に達成する べきだと主張するものではない。むしろこの全体像を意識したうえで、 各図書館のニーズと力量に合わせて柔軟に取捨選択できるかたちとする。
8.表中の個々の目標達成の方法・手段を立案するに当たっては、 さらにもう一段具体化した目標を設定し、実施計画を作成しなければならない。
9.各図書館での実施の際の具体的作業については、このガイドライン とは別に、ハンドブックやマニュアルの類を刊行していく予定である。
大学図書館の使命は、大学における教育・研究、生活、および 地域貢献等の諸活動に対する情報面での支援である。その支援には、 資料・情報提供サービスと、図書館利用教育の二本の柱がなければならない。
大学図書館における図書館利用教育とは、自立した情報利用者の育成を 目的として大学コミュニティの全構成員を対象に体系的・組織的に行われる 情報教育を指す。
大学図書館は以下の10の項目を、総合的に実施しなければならない。
1-1. 利用者の自立の支援という理念を自館の方針として明文化する。
1-2. その方針を館内および大学コミュニティ内に周知し、 理解者・協力者を増やし、合意を得る。
2-1. 図書館および大学の公式の事務分掌の中に図書館利用教育の規程を明記する。
2-2. 図書館利用教育の計画・実施・評価に責任を持つ部署と責任者を決める。
2-3. 図書館利用教育の責任者には図書館の他の主な業務の責任者と同等の 地位・権限を与える。
3-1. 大学の使命・目的を理解する。
3-2. 大学のカリキュラムと諸活動を把握する。
3-3. 利用者をセグメント化し、各セグメントの情報ニーズを明確にする。
3-4. 図書館における現行の図書館利用教育の実態を分析する。
4-1. 図書館利用教育の目的・目標を次の5つの領域で明文化する。
・領域1:印象づけ
・領域2:サービス案内
・領域3:情報探索法指導
・領域4:情報整理法指導
・領域5:情報表現法指導
4-2. 利用者の各セグメントのニーズに対して多様な目標を設定する。
4-3. 少数のニーズに対する目標も含める。
5-1. 設定した目的・目標を達成するために必要な方法・手段を 具体的に設定する。
5-2. その方法・手段を準備するために必要な要員と予算を設定する。
5-3. 準備作業の手順と日程と担当者を設定する。
6-1. 図書館利用教育に関連する予算を毎年計上し確保する。
6-2. 予算は目標達成に必要な職員、研修、施設・設備、教材、 広報手段の調達に十分な額にする。
7-1. 図書館利用教育の計画・実施・評価を行うことのできる 図書館員を採用・育成する。
7-2. 目標達成に必要十分な数の職員を確保する。
7-3. 研修内容には、指導法、教材の作成法、機器の操作法、評価方法、 各学問分野の専門知識などが含まれる。
7-4. 研修マニュアルを作成する。
8-1. 目標に適した施設・設備を提供する。
8-2. 多様な指導形態に合わせて教材を準備する。
8-3. 実習で利用される参考ツールを教材として揃える。
8-4. 多様な広報手段を展開する。
8-5. 教材準備のための機器と作業場を提供する。
8-6. 実施マニュアルを作成する。
9-1. 目標の明文化、実施への大学コミュニティ構成員の参加・協力の 体制を確立する 。
9-2. 目標達成度の評価への大学コミュニティ構成員の参加・協力の 体制を確立する。
10-1. 各プログラムの効果を定期的に評価する。
10-2. 目標達成度を評価し、実績を館内および大学コミュニティ内に公表する。
10-3. 次期の目標の設定に反映させる。
(省略)
(省略)
以下の解説は、単に用語の解説にとどまらず、このガイドラインの 意図をより深く解説したものを含めている。ぜひ本文に合わせて一読して いただきたい。用語の説明部分は利用教育を理解し実施に移す助けとなるために 作成されたものであり、その範囲以外の適用は考慮されていない。
アクセスポイント:検索ツールを用いる際に、手がかりとする言葉、または記号をさす。 著者名、書名、それらの一部、キーワード、件名、分類番号、出版者、出版年等がある。 利用者(特に学生)は何をアクセスポイントとするかが分かりにくい。したがって、 指導の際に各検索ツールのアクセスポイントを指摘するだけでは充分ではない。 自分の求める情報を表現するアクセスポイントをどのようにして探すかの指導が必要である。
オリエンテーション:大学コミュニティに新しく参加した人に対して、大学生活を 円滑に送れるように案内するための様々なプログラムからなる行事のことをさす。 当ガイドラインの領域2で言うオリエンテーションは、初来館利用者を対象とし、 施設・サービスの基本的事項の案内を目的とする各種行事の総称で、館により ガイダンスや利用案内週間などと呼称は様々である。
学科関連指導:ある学科目の学習・研究の過程において必要とされる情報探索法・ 整理法・表現法を学ばせる指導方式を指す。通常、教員から要請されて図書館員が その授業時間の一部を使って指導を行う。現在、多くの大学図書館が実施している ゼミ・ガイダンス等はこれに相当する。学生には課題解決という強い動機づけが あるので、「独立学科目」よりも指導効果が上がる。
学科統合指導:情報探索法・整理法・表現法の学習を大学の全体カリキュラムの 中に組み込み指導する方式。最初から教員と図書館員が共通の目標のもとに 協力して科目の計画・実行・評価を行う点で「学科関連指導」よりも相互依存度が 高い。実際の指導は教員と図書館員の分業になる。大学教育と図書館利用教育の 全面的な統合が実現される段階に当る。
協力体制:大学図書館において利用教育への学内協力体制を確立するには、教学 機関との連携が最重要課題になる。そのためには教授会あるいは各種の委員会等、 そして一般教員に対して、活発な広報活動を展開することにより、図書館の教育 研究支援サービスの重要性・有用性への理解を広めねばならない。大学に図書館 学科や司書養成課程があればその教職員・大学院生も有力な協力者となる。 利用教育を受けた学生の一部はいずれ大学院生になり教員になって次の世代の 協力体制を担うはずである。図書館独自に実施できる利用教育プログラムが ある程度成熟してきたら、次の段階として大学教育のカリキュラムの中に 図書館利用教育を定着させる方向への取り組みを目指すべきである。 そのためには大学経営サイドの理解と協力が要請される。事務局職員にも 協力体制の一翼を担ってもらわなくてはならない。さらに一歩進めれば、実質的に 各種の利用教育プログラムを総合的に企画立案する“推進本部”として機能する ような組織の設置が必要になる。図書館員にはその協力体制を支える コーディネータとしての力量が求められる。こうして大学のすべての構成員が 図書館利用教育に関心を持ち、重要性を認識し、協力者となるというのが理想の 構図である。
検索ツール:必要な資料や情報を探すために用いるものの総称。OPAC、 二次資料(書誌、目録、索引誌)、レファレンス・データベース等を指す。
現状分析:大学での情報教育のプログラムづくりに当たっては、自校の カリキュラムの現状分析だけでは十分でない。生涯学習の観点から初等・中等 教育および社会教育・社内研修等の実態について把握し、入学前・在学中・ 卒業後を通しての大学生像を浮彫りにする必要がある。
広報:広報には領域1、領域2の図書館一般の紹介や自館の案内のためのものと 同時に、領域3、領域4、領域5における個々のイベントを実施する際の 告知・宣伝もある。
コミュニティ:大学コミュニティとは、図書館の設置母体である大学キャンパス またはそこに集う理事者・教職員・学生を指す。大学の政策によっては、 さらに広義に、卒業生、寄付者、支援者、地域住民等を含む。
CAI:Computer Assisted Instruction の略語。予めコンピュータに組み込まれた 学習プログラムを学習者が個別的に対話しながらたどる形で学習を進められる 教育支援システムのこと。
自館の特徴:その図書館らしさ。図書館という機関にとって「人格」に当るもの。 ライブラリー・アイデンティティとも言い、施設、資料、図書館員、サービスの 総体がひとつの個性的な存在感を持つことを指す。サインや広報媒体、帳票類、 窓口応対なども含めて、利用者の五感に触れるすべての要素が、統合的に企画 ・管理されている状態が理想となる。図書館利用教育の実施に当たっては コミュニケーションの土台となる。
情報教育:狭い意味の「コンピュータ教育」ではない。情報の生産・流通・検索 ・獲得・加工・保管・消費・表現・評価などあらゆる側面に関する知識・技能の 習得を支援する教育、すなわち情報リテラシー教育を指し、図書館利用教育は その一端を担う。
情報源:印刷媒体、AV資料だけでなく、データベースや通信ネットワークを 通じての外部情報機関をも含む。
情報探索ストラテジー:有効で効率的な探索を行うため、探索開始に先だって、 どのような情報源やツールを用い、どのような順序(流れ)で進めていくかを、 情報ニーズや探索目標に基づいて規定した計画案(戦略)。
情報ニーズ:情報ニーズは調査・研究や学習の際に生じるものだけでなく、 生活の様々な場面で必要になる情報へのニーズ全般を指す。needsは需要であり、 潜在需要と顕在需要がある。要求demandsは利用者自身によって意識され表明された 需要であるが、必ずしも本人の真の需要を正確に反映しているとは限らない。 したがって図書館が利用者の真の需要を把握するためには、調査と 分析が必要になる。
情報の特性:メデイアの持つ特性、また情報発信の年代・地域・社会状況・ 発信者(源)の持つ特徴と限界等を指す。学問分野ごとに情報の生産、流通、 消費の形態は異なり、それぞれ固有の特性を持つ。さらに学説や学派ごとの 特性も、学習・研究の前提的な知識である。
情報の評価: 多種多様な情報が氾濫する現代においては、真に有用な情報を 獲得するためには、その特性を理解し、新しさや確かさなどを適確に評価 できるだけの判断力が必要とされる。その評価は利用目的によって変わる。 情報源を確定し,発信者の視点・立場と信頼性,作成時期の新しさや妥当性, 情報の取り扱い範囲,扱い方,正確さ,客観性,出典表示の有無, 情報収集方法,形態面での使い勝手のよさ等が判断の材料となる。
情報の窓:<窓>というコンセプトは重要である。たとえ今は蔵書が貧弱でも、 相互協力やデータベースの利用によって、利用者が思っているよりはるかに 広範囲で高度な情報提供サービスが可能になる。「まず蔵書の充実をしてから 利用教育を始める」などという先後論は成立しない。図書館は単独に 存在しているのではなくて、世界中に張り巡らされたネットワークに向けて 開いているひとつの窓のようなものだという印象を与えたい。
情報倫理:情報の入手や発信には、他の社会的行動と同様に倫理(モラル)が 要求される。不正コピー問題、侵入・改変問題、自由と規制の問題等を考える 前提として、情報教育の根底には常に、他者の人権、プライバシー、著作権を 尊重するという情報倫理が意識されていなければならない。
自立:自立とは、自らの動機に基づき、習得した知識・技能を用いて、主体的に、 目的を達成できる能力を身に着けた状態をいう。自立的利用者という概念は 「図書館員の助けを借りなくても図書館を利用できる成熟した利用者」を指す。 これは図書館員が不必要になるという意味ではない。なぜなら、利用者が次々と 自立していく一方で、新しい初級利用者も毎日来館し続け、また情報環境の 急激な変化の中でその知識・技能が絶えず 陳腐化するからである。この意味で 自立という課題は大学教育の中で完結するものではなく、大学入学前から 卒業後の全期間を貫く継続的な生涯学習の目標理念である。図書館員にとっては、 自立促進の成果として、例えば領域2のクイック・レファレンスの件数の比率が 低下して余力が生まれるが、領域3、4、5の専門的サービスへのニーズは 高まる。利用者の自立は図書館員の専門性を高める必要条件なのである。
セグメント化:マーケティング用語。マーケテイングにおいては「市場を、 顧客の所得、地域、嗜好、年齢、職業等、およそ販売に影響を与える要因を すべて考慮にいれて細分化し、それぞれの特性に応じたきめ細かい商品政策」 を行っている。これは大学図書館にもぜひ応用したい手法であり、利用度 (未来館者/初来館者/反復利用者、等)、利用者区分(学部学生/大学院 学生/教員/職員、等)、利用目的(自習/調査/娯楽、等)、専門分野など 様々な区分要素による利用者の細分化が考えられ、サービス計画立案の 基礎になる。
組織的:組織的にとは個人の思いつきや努力によるのではなく、図書館全体、 またその設置母体である大学の組織全体が公式の業務として、その人的資源を 総合的に活用して、計画的にプログラムを組み行うことを指す。
少数のニーズ:図書館は、潜在的利用者も含めたすべての個人を利用者として 尊重しなければならないが、特に大学内の地位や、身体的、社会的、経済的、 政治的、思想的、宗教的、言語的、民族的、文化的等の様々な意味での弱者や マイノリティへの配慮は欠かせない。大学の国際化、情報化、地域開放 という流れの中で、図書館の利用者は一層多様化することが予想される。 留学生、帰国学生、編入生、外国人教員・研究者、非常勤 職員、障害者等が 持つ少数者のニーズに対しては、より一層きめ細かなサービスを提供 しなければならない。
チュートリアル:図書館員や教員、大学院生のテイーチング・アシスタント等 による個別指導時間のこと。
独立学科目:他の学科目と同様に、受講すれば単位が与えられる情報利用教育の 科目である。基礎的・一般的な情報探索法・整理法・表現法を対象とするものと、 専門分野に関する情報探索法・整理法・表現法を対象とするものとがある。 変則的には司書養成課程の一部として行われる場合もある。一定の時間をかけて 宿題、実習、かつ評価を行うので知識・技能の定着化には効果的ではあるが、 学生の直接の情報ニーズに合致しない場 合、動機づけが弱くなるという 弱点もある。
図書館:近年、大学においては図書館という名称が消えつつあり、情報センター またメディアセンター等と称されるようになってきた。名称はどうであれ、 ここでいう図書館とは各種メディアの資料・情報を収集・組織し利用に供する ことにより、人々の知る権利を保障するという図書館機能を持つ社会的機関 全般を指す。
図書館員の専門性: 図書館利用教育担当者の専門性には、従来言われてきた 「図書館員の専門性」に加えて、教育的指導の能力や、館内の横断的な プロジェクトの実行管理能力が必要である。
パスファインダー:ある特定のトピック(主題)に関する資料・情報を 収集する際に、関連資料の探索法を一覧できるリーフレットのこと。最近は データベース形態で提供されるものもある。網羅的な文献リストや一般的な ガイドブックとは異なり、あくまで具体的限定的なトピックの探索法を 簡便に示すことを狙った道案内である。
パブリシティ:宣伝的な情報をジャーナリズムに提供して、無料で一般的な 記事や番組の形で報道してもらうことを指す。有料の広告とは違って、 メディア側が素材の取捨選択と報道のし方を判断するので、ニュース性・ 話題性が要求されるが、その分だけ受け手側の信頼感も高い。
評価:評価する主体によって、図書館による自己評価、大学構成員による 評価、大学外の第三者による評価に区分される。評価のポイントを計画と 実行の過程に置く形成的 formative 評価と、目標到達に置く総合的 summative 評価がある。
ブラウジング:必要な資料を特定してから、その入手に向かうことが 情報探索の基本ではあるが、漠然とした目的で、あるいは無目的で、 書架を眺め歩いたりランダムに資料を通読すること、つまりブラウジング には思いがけない情報探索の効用がある。
マスメデイア教材:指導に使用する教材としては、図書館あるいは大学の 内部で自作したものだけでなく、情報教育関連の雑誌の特集記事、テレビ 番組、市販ビデオソフトなども大いに活用するべきである。
マニュアル:サインの維持管理マニュアルや、オリエンテーションの ツアーマニュアル、教材の準備マニュアル、授業の指導マニュアルなど、 標準化のために様々な種類が必要である。
目的と目標:目的とは理念的・抽象的な終着点 (goals) を指し、 目標とは図書館利用教育の個々のプログラム(具体的な企画の実施計画) の測定・評価可能な到達点 (objectives)を指す。
予算:図書館利用教育に関する予算には、人件費や、使用機器、消耗品 などの諸経費の全てを含まねばならない。人件費には、指導担当図書館員 だけでなく、臨時職員、嘱託職員、委託職員、そして協力を依頼する学内 他部署職員の拘束時間さらには担当者の研修費、講演会を企画すれば講師 謝礼も必要である。また通常の利用のための参考ツールは資料費として 計上されるが、図書館利用教育の教材としての参考ツールの予算も、実習 で利用者が手にすることができる数量分を別途確保しておく必要がある。
利用案内:パンフレット、リーフレットなどの印刷紙媒体を図書館界では 「利用案内」と称することが多いが、誤解や混乱のもとになるので呼称を 工夫したい。文字通りの語義では、「利用の案内」は5つの領域の それぞれの中に存在している。物理形態としてはパンフレット、リーフレット だけではなく、掲示、放送、ビデオ、パソコン、コンピュータネットワーク、 テレホン・サービスなど様々な形で「案内」が可能である。
1) ACRL Bibliographic Instruction Task Force."Guidelines for
Bibliographic Instruction in Academic Libraries"
2) ACRL Bibliographic Instruction Section."Model Statement of
Objectives for Academic Bibliographic Instruction"
3) ACRL Instruction Section."Guidelines for Iinstruction
Programs in Academic Libraries"
4) 渋川雅俊.“大学図書館利用者教育研究序説:「テキサス大学
図書館利用者教育総合計画」を中心として”
図書館利用教育とは、個々それぞれの図書館、また各館種が孤立した形で 行えるものではない。各図書館の設置母体はもとより、図書館団体、 教育機関等が協力し、総体となって取り組むことにより、始めてその目標を 達成することができる。その意味で「総合版」は、大学図書館、学校図書館、 専門図書館など、各館種別ガイドラインの共通基盤として位置づけられるものである。
このガイドラインはすべての利用者が各自の状況に合わせて図書館の活用能力を 身に付けられる体制を確立するために、関係者が実施すべき指針である。
図書館利用教育とは、すべての利用者が自立して図書館を含む情報環境を効果的・ 効率的に活用できるようにするために、体系的・組織的に行われる教育である。
図書館の活用能力を身に付けることは、人間の成長と自立の大切な要素であり、 それは情報化社会・生涯学習社会と言われているこの時代を生きるすべての人に とって欠くことのできない基礎的能力である。また常に成長しサービスを広げていく 図書館は、積極的にその利用方法を人々に知らせることにより、その本来の機能を 最大限に発揮することができる。
現に図書館を利用している、いないに関わらず、すべての利用者である個人 またはグループを対象とする。
目的・目標は、利用者のニーズと情報利用能力の到達度に合わせて設定するべきで、 次の5つの領域が考えられる。
・領域1:印象づけ
各自の情報ニーズを充たす社会的機関として図書館の存在を印象づけ、必要が
生じた場合に利用しようという意識を持つようにする。
・領域2:サービス案内
各自の利用する図書館の施設・設備、サービスおよび専門的職員による支援の
存在を紹介し、その図書館を容易に利用できるようにする。
・領域3:情報探索法指導
情報の特性を理解すると同時に、各種情報源の探し方と使い方を知り、主体的な
情報探索ができるようにする。
・領域4:情報整理法指導
メディアの特性に応じた情報の抽出、加工、整理、および保存ができるようにする。
・領域5:情報表現法指導
情報表現に用いる各種メディアの特性と使用法を知り、目的に合った情報の生産と
伝達ができるようにする。守るべき情報倫理を伝える。
5-1.各図書館が行う。
5-2.図書館関係団体が行う。
5-3.学校教育機関において図書館員と教員とが協力して行う。
5-4.国や自治体が生涯学習支援活動の一環として行う。
すべての人に図書館利用教育を受ける機会を保障するためには、関係機関が これをその業務のひとつと認識し、組織的に取り組まなければならない。
6-1.各図書館は図書館利用教育を業務分掌に規定し、必要な人的・予算的措置を図る。
6-2.図書館関係団体は各種基準の中に図書館利用教育の項目を設ける。
6-3.初等・中等教育機関の学習指導要領の中に図書館利用教育を的確に位置づける。
6-4.高等教育機関はそのカリキュラムの中に図書館利用教育を位置づける。
7-1.図書館員養成のカリキュラムの中に図書館利用教育法に関する科目を設置し、 その理念・内容・指導法を教育する。
7-3.教員養成のカリキュラムの中に図書館利用教育法に関する科目を設置し、 その理念・内容・指導法を教育する。
8-1.図書館・情報学の研究対象として図書館利用教育を位置づけ、関連学問領域の 成果を取り入れ、理論構築、教育方法等の研究を推進する。
8-2.図書館利用教育をテーマとする研究会・研修会を開催する。
8-3.共同利用できる様々なメディアの標準的教材を開発し、図書館利用教育が
各学問分野・各レベルで、どの場においても実施できるように、その普及を図る。
図書館利用教育の実施状況を把握し評価するために、以下のことを行う。
9-1.各図書館が行う調査・統計や業務報告の項目に図書館利用教育を加える。
9-2.図書館関係団体が行う調査・統計の項目に図書館利用教育を加える。
9-3.学校教育機関が行う自己点検・自己評価の項目に図書館利用教育を加える。
9-4.図書館関連行政機関が行う調査・統計の項目に図書館利用教育を加える。
(委員長)
濱田 敏郎(常磐大学)(1989- )
(委員)
青木 玲子(東京ウイメンズプラザ図書館資料室)(1997- )
有吉 末充(神奈川県立神奈川工業高等学校図書館)(1996- )
市古 健次(慶応義塾大学三田メデイアセンター)(1992-1994)
尾田真知子(北陸学院短期大学ヘッセル記念図書館)(1989- )
片桐あゆみ(千代田化工建設(株)ライブラリー)(1995-1996)
小林 淳(鎌倉市中央図書館)(1995-1996)
座間直壮(調布市立中央図書館)(1995)
椎葉もと子(白百合女子大学非常勤)(1989-1995)
高田 淳子(神奈川県立向の岡工業高等学校図書館)(1995)
戸田 光昭(駿河台大学)(1997- )
仁上 幸治(早稲田大学図書館)(1990- )
野末俊比古(学術情報センター研究開発部)(1995- )
平久江祐司(図書館情報大学)(1997- )
松原 修(立命館大学メデイアセンター)(1996)
丸本 郁子(大阪女学院短期大学)(1989- )
毛利 和弘(亜細亜大学)(1989- )
図書館利用教育ガイドライン−大学図書館版−
1998年8月発行
発行:社団法人日本図書館協会 〒154-0004 東京都世田谷区太子堂1-1-10
電話03(3410)6411
日本図書館協会図書館利用教育委員会『図書館利用教育ガイドライン −大学図書館版−』1998年8月,日本図書館協会このページの最終更新日:2001(平成13)年11月27日