令和6(2024)年能登半島地震について

この度、地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。
日本図書館協会及び図書館災害対策委員会も微力ではありますが、支援を模索し、対応してまいります。
被災情報並びにお困り事がありましたら、メールにてご一報いただければ幸いです。
saigai★jla.or.jp
(★を半角@に換えてください。)








全国図書館大会2019_図書館の自由

第105回(令和元年度)全国図書館大会 三重大会 第9分科会 図書館の自由

テーマ:図書館利用のプライバシー保護
日時:2019年11月22日(金)9時15分~12時15分
会場:三重県総合文化センター 文化会館棟


分科会概要

 ICTが日常生活に欠くことのできないものとなり、ビッグデータを活用しようとする動きがある一方、個人情報保護法制の整備から十数年を経て、個人のプライバシー保護意識も高まっています。民間ポイントカード会社の保有する個人データについて、顧客に無断で捜査機関からの照会に応じることの是非がマスコミで話題となりました。「図書館の自由に関する宣言」には1979年改訂で利用者の秘密を守ることを加え、図書館利用にかかわるプライバシーを保護するよう提唱しています。本分科会ではあらためてこの基本を確認し、6月に公表したガイドラインについても解説します。 


要旨

基調報告:図書館の自由・この一年

 西河内靖泰(日本図書館協会図書館の自由委員会委員長)

 この一年間の図書館の自由に関する事例をふりかえり,自由委員会の論議と対応を報告します。
 主な事例は、捜査機関の「照会」に応じた利用情報提供へ市民が抗議、図書館からの個人情報漏えい、著作権侵害などを理由とする絶版・回収・利用制限要請、『開けられたパンドラの箱―やまゆり園障害者殺傷事件』出版をめぐって、フィクションの中のプライバシー侵害、大量に廃棄された図書、著作権侵害サイト対策としてのブロッキングなどです。


報告「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」について

 佐藤眞一(日本図書館協会図書館の自由委員会委員)

 日本図書館協会は、1984年に「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」を公表し、利用者の秘密を守るための具体的基準を示しています。しかし、その後の急速なインターネットの普及、ICT技術の進展のなかで、当時想定していなかった課題が出てきたため、「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」を策定し、6月に公表しました。7月、8月にはガイドラインについてのセミナーを東京と大阪で開催したところですが、本分科会においても理解を深め、図書館サービスの現場で具体的に活用していただきたいと思います。

資料「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」 http://www.jla.or.jp/committees/jiyu/tabid/817/Default.aspx


報告 『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』の増補について

 熊野清子(日本図書館協会図書館の自由委員会副委員長)

 『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』第2版(以下、『宣言解説』2版)は2004年の刊行から15年が経過しています。自由委員会では、この間の情報環境やプライバシー概念の変化に即して解説の記述を増補し、また関連事項への参照をわかりやすくすることとしました。本分科会では主要な増補部分について報告し、参加者の意見も反映したうえで、図書館サービスの実務に役立つ解説書としたいと思っています。
 なお、報告では『宣言解説』2版を参照しますので、参加者はできるだけ手元にご持参ください。

当日配布増補文案(新しいウインドウが開きます)


図書館の自由展示パネル『なんでも読める・自由に読める』

 「図書館の自由」の歴史をわかりやすく提示するパネルを展示します。このパネルは無料で貸出しています。関連資料とともに図書館での展示や職員研修にご活用ください。


大会要綱

(大会サイト掲載PDF 新しいウインドウが開きます)

報告「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」について、及び質疑応答を、『図書館の自由』第107号(2020年2月)に掲載しています。


大会ハイライト

第9分科会/図書館の自由 図書館利用のプライバシー保護

(『図書館雑誌』vol.114,no.2より)
 基調報告では,JLA図書館の自由委員会の西河内靖泰委員長から,この1年間に生起した図書館の自由に関する主な事例について,背景や動向,自由委員会の活動等が報告された。捜査機関からの「照会」について,苫小牧市立図書館が警察からの照会に応じて特定個人の貸出と予約状況を提供していたことに端を発し,その対応状況が広く報道等で取り上げられたことに加え,企業による警察への顧客情報の提供の是否に関心が集まったことが指摘された。また,著作権侵害やデータねつ造のあった本,殺傷事件加害者の手記等が問題とされたことや軽減税率と有害図書の関係,京都府内の山林で投棄された大量の図書館蔵書が発見された事件,「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」などが取り上げられた。
 次に,JLA図書館の自由委員会の佐藤眞一委員から,日本図書館協会が2019年6月に公表した「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」に関し,策定の背景や経過,策定後に大阪と東京で開催したセミナーの状況等が報告された。ガイドラインの各項目について,館界におけるプライバシー保護の歴史的経緯や個人情報保護法制の変遷,自己情報コントロール権の考え方等を交え,解説が加えられた。情報技術が急速に進展する今日,図書館現場におけるプライバシー保護の指針,そして点検のためのチェック項目として,日々のサービス実践の中でガイドラインを実際に活用することが提案された。
 続いて,JLA図書館の自由委員会の熊野清子副委員長から,自由委員会において検討が進められている『「図書館の自由に関する宣言 1979年改訂」解説』増補の作業について,増補の方針やスケジュール,現時点での主要な文案が示された。また,2000年以降に生じた問題やそれらに基づく留意点の反映,個人情報保護法制との関係や管理運営の多様化への対応など,文案作成上の多岐にわたる論点が提示された。今回提示された文案はあくまで検討段階のものであり,2020年度中の増補版解説の刊行に向けて,図書館サービスの実務に有用な解説書とするため,今後,協会会員に公表して意見を募り,内容に反映するプロセスを設けることが説明されるとともに,意見の積極的な提供への協力が呼びかけられた。
 質疑では,殺傷事件加害者による手記の資料収集における扱い,図書館システム上のパスワード管理についてガイドラインに基づく考え方,学校図書館におけるプライバシー保護などに関連して質問が寄せられた。また,会場討議では,宣言解説増補に関しては,読書通帳の項目の要否についてほか,公人・有名人の読書記録についての考え方を示すべきとの意見が出された。さらに,あいちトリエンナーレに関連し,法律の専門家の間で船橋市西図書館の蔵書廃棄事件の判例が話題に上っていることから,図書館では表現の自由について進んだ議論を行っていることを世間に周知する必要があるとの提起があった。参加者は74名であった。
(すずき あきお:高知県立図書館)


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