「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」について

 日本図書館協会ほか図書館関係団体は、「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」での権利者側団体との協議に基づき、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」を2月18日に公表しました。
 著作権法が一部改正されたことにより、この改正を円滑に運用できるよう、同協議会ではガイドラインが検討されてきました。ガイドラインでは、サービス対象者の範囲、作成する資料の形態、「ただし書き」の扱い、などが示されています。


障害者用音訳資料作成の一括許諾システムの終了について

 改正著作権法の施行(2010年1月1日)に伴い、日本文藝家協会の協力により実施してきた「障害者用音訳資料作成の一括許諾システム」は終了することとなりました。参加図書館に毎月配信していた「許諾著作者名簿」は今後は配信しません。
 このシステムは、2004年4月協会と日本文藝家協会との間で協定書を結び実施してきたものです。このたびの著作権法施行にともない、図書館は許諾を求めることなく障害者用音訳資料の作成が可能となりました。
(2010年1月)

参考(2004年8月〜2009年12月)障害者用音訳資料作成の一括許諾システムについて

社団法人日本文藝家協会と交わした「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾の申し込みは、下記のようにお願いします。
1.申込方法2.申込・問合先3.名簿の送信4.報告5.試聴協定書ガイドライン

1.申込方法

電子メール(もしくはファクシミリ等)で,以下の項目を明記して申し込んでください

(1)「障害者用音訳資料利用ガイドライン」を順守する旨の文言
例:当図書館は,日本図書館協会と日本文藝家協会との間で交わされた音訳資料作成の一括許諾に関する協定書の趣旨を尊重し,障害者用音訳資料利用ガイドラインを順守して業務にあたります。
(2)図書館名
(3)館長名,担当者名
(4)所在地,電話番号,FAX番号
(5)メールアドレス:これは「著作者名簿」の送信先となります。
(6)日本図書館協会[施設]会員・非会員の別
2.申込・問合先 日本図書館協会事務局音訳係
E-mail:onyaku@jla.or.jp FAX.03-3523-0841 TEL.03-3523-0811
〒104-0033 東京都中央区新川1-11-14
※申し込みはなるべく電子メールでお願いいたします。
※申し込みを受け付けた旨を登録後に通知します。
3.名簿の送信 電子メールの添付ファイル(CSVファイル)で定期的に行います。
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2007年5月から方法を変更いたしました。
最新の「許諾著作者名簿」をこちらのページにアップいたしますので、ダウンロードして使用してください。最新の名簿に更新した際に電子メールでご連絡いたします。
※電子メールのアドレスが変更になった場合は必ずご連絡ください。
●許諾著作者名簿(2009.12.1分)(エクセルファイル)
※参加図書館には2009年12月2日に許諾著作者名簿の最新版(上記)をアップしたことを電子メールでご連絡しました。連絡メールが届いていない場合はすみやかにご連絡ください。
4.報告(「協定書」第2条第2項) 各図書館は年度ごとに実績を日本図書館協会宛てに報告していただきます。これは日本文藝家協会および各著作者に報告されます。
(1)報告内容:著作者名,作品名,出版社名,発行年,作成日
(2)報告時期:毎年度4月末
(3)報告方法:電子メール
※詳細は,年度末3月ごろに依頼文書を送信します。
5.試聴(「協定書」第2条第2項) 無作為抽出した音訳資料を提供していただくことがあります。音訳水準の維持向上のため,日本図書館協会,日本文藝家協会共同で試聴するものです。

公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書

第1条(総則)
この協定は,社団法人日本図書館協会(以下「甲」とする)に登録してこの協定に定めるシステムに参加する公共図書館,大学図書館,専門図書館等(以下「参加図書館」とする)が音訳資料を作成する際に,社団法人日本文藝家協会(以下「乙」とする)が管理委託を受けた著作権者の作品について,「一括許諾」を与えるための協定である。

第2条(一括許諾システム)
1.図書館が著作物の音訳資料を作成する場合には,著作権者の許諾が必要であるが,乙が管理委託を受けた著作権者にかかわる著作者のリスト(以下「著作者リスト」という)に掲載された著作者の作品については,例外的に事前の許諾を必要としないものとし,参加図書館は音訳資料の作成を開始できる。この場合,参加図書館が甲及び乙を経ることによって著作権者に許諾を求め,これに対し,個々の著作権者が乙及び甲を経ることによって参加図書館に許諾を与えたものとする。このシステムを「一括許諾システム」と呼ぶ。
2.前項に従って音訳資料を作成したときは,甲は,その作品名,著作者名,出版社名,発行年等と当該図書館名を,年度ごとにまとめ,次年度3箇月以内に,乙に報告しなければならない。また,甲及び乙は共同して,報告された中から,無作為に抽出された音訳資料を試聴し,音訳技術の向上について必要な措置を講ずるものとする。

第3条(著作者人格権の保護)
甲は,参加図書館が著作権法に明示されている著作者人格権(第18条〜第20条)を侵害しないように,各参加図書館に対して周知を図らなければならない。

第4条(ガイドライン)
甲は,参加図書館に対し,作成した音訳資料の利用は視覚障害者等の限定された利用者を対象とすることに関して周知する。対象とする利用者の範囲,及び音訳資料の作成ならびに利用についての注意点については,参加図書館は,別に定める「ガイドライン」に従う。この「ガイドライン」を逸脱した参加図書館について,甲は「一括許諾システム」の利用を停止するなどの措置を採るものとする。

第5条(リストの更新)
1.甲は,参加図書館のリストを乙に提出しなければならない。以後,新たにこのシステムに参加しようとする図書館は,ガイドラインの各条項を順守する限りにおいて,参加図書館と同様「一括許諾システム」を利用できる。甲が,新たにこのシステムに参加しようとする図書館からの申し出を受理した場合,甲は3箇月以内に,参加図書館のリストを更新して,乙に報告しなければならない。
2.この協定の締結以後に,「一括許諾システム」に参加した著作者の作品についても,参加図書館は,ガイドラインの各条項を順守する限りにおいて,音訳資料を作成することができる。また,「著作者リスト」から削除された著作者の作品については,参加図書館は,音訳資料の作成を開始してはならない。ただし,音訳資料の作成の途中で当該著作者が「著作者リスト」から削除されたときも,音訳資料の完成まで許諾は取り消されない。
3.「著作者リスト」に異動があった場合,乙は3箇月以内に,このリストを更新して,甲に報告しなければならない。この報告を受けたとき,甲は,その内容を1箇月以内に参加図書館に伝達しなければならない。

第6条(協定の廃止等)
この協定はとくに期限を定めない。「一括許諾システム」が想定した状況に変化が生じたり,図書館,または著作者の側に著しい不都合が生じることが判明した場合には,甲乙協議の上でシステムの修正を図るか,またはシステムそのものを廃止することができる。その他の問題については,甲乙協議の上で,最善を尽くすこととする。

2004年4月30日
社団法人 日本図書館協会
社団法人 日本文藝家協会


障害者用音訳資料利用ガイドライン

(目的)
1 このガイドラインは,公共図書館など視覚障害者の福祉・教育に携わる図書館で(社)日本文藝家協会が指定する図書館団体に登録している図書館(以下図書館という)が,(社)日本文藝家協会の管理する権利者の情報を利用して,通常の印刷物での読書に困難を持つ者(以下,「読書に困難を持つ者」)のために音訳資料を作成し,貸与等を行う場合に順守すべき事項を定めることを目的とする。

(障害者用音訳資料を利用できる者)
2 音訳資料の聴取及び貸与を受けられるのは,読書に困難を持つ者で,当該図書館の障害者サービスへの登録を行った者に限定される。

(登録できる者)
3 次項以降に詳細を定める視覚障害者,重度身体障害者,寝たきり高齢者,その他の読書に困難を持つ者であって,当該図書館が定めるその他の登録要件を満たしていなければならない。
(1)視覚障害者 身体障害者手帳の交付を受けている者で,障害者程度等級表の視覚障害1級から6級までに該当する者
(2)重度身体障害者 身体障害者手帳の交付を受けている者で,障害者程度等級表の1級から2級までに該当する者
(3)寝たきり高齢者 要介護の認定を受けた「寝たきり度」ランクB及びCの者
(4)その他の読書に困難を持つ者 身体の障害,読みの学習障害,疾病等により読書に困難を持つ者で,前三項に準ずると当該図書館が判断し,所属図書館団体と(社)日本文藝家協会が該当と了解した者

(登録時の要件)
4 貸出を受けた音訳資料を第三者に貸与すること及び複製し第三者に譲渡又は貸与することを,禁止事項として登録時の要件とする。

(登録の抹消及び貸出の禁止)
5 図書館は,利用者が次の各号に該当する場合は,音訳資料の利用登録を抹消するか又は貸出停止するなどの措置を取らなければならない。
(1)印刷物による読書の困難が解消した者
(2)登録時に虚偽の申請を行ったとき
(3)登録時の要件に反したとき

(音訳する資料)
6 市販されている音訳資料を用いて読書の要求を適えることができる場合は,市販資料の購入等によることとし,音訳は行わない。

(著作者人格権の尊重)
7 図書館は著作権法に規定された著作者人格権を尊重して音声作業を進めなければならない。
(1)音訳できるのは公表された作品に限られ,未発表の生原稿,手紙,日記の類を対象とするものではない。
(2)音声資料のパッケージ等に著作者の氏名を,著作物に表示されている形で表示すると同時に,音訳資料の内部においても音読して表示しなければならない。
(3)著作物の内容を改編したり,短縮したりすることはできない。また,語句の読み間違い等についても細心の注意を払うものとする。

(音訳作業者の要件)
8 音訳作業者は各図書館が定める研修を経た者,もしくはそれと同等以上の力量を持つ者であることを要する。

(音訳作業者の研修等)
9 図書館は音訳の質の向上に努めるものとする。
(1)研修は,『障害者サービス 補訂版』(日本図書館協会障害者サービス委員会編 日本図書館協会 2003)の「サービスにかかわる音訳者,点訳者等の養成」に記述されている程度のものを行うことが望ましい。また,研修の一テーマとして,「著作権法」についての講義が含まれているものとする。
(2)音訳の質を調査するため,(社)日本文藝家協会から指定された図書館は,同会あて指定音訳資料の複製物を提出しなければならない。

(音訳資料の複製)
10 このシステムを利用して作成した資料の複製は原則として,保存用マスターを除いて,行なわない。他の図書館の求めに応じ,貸与ではなく複製物の作成・譲渡により提供したい場合は,登録図書館団体を通して(社)日本文藝家協会の許諾を得なければならない。