2000年3月26日
広島県東広島市長
 上田 博之 様
                        社団法人 日本図書館協会
                           理事長 栗原 均
 

東広島市の図書館事業の拡充についての要望

 

 私どもは全国の公立図書館をはじめ各種図書館、および図書館職員などにより組織している社団法人で、日本の図書館事業の整備、発展に資するための活動をしております。  

 その立場から、本年1月以来の貴市におけるサンスクエア図書館の廃止、縮小に関する構想に強い関心をもち、注目してきました。広島県内の会員、市民の方々からもご意見や疑問をもたれての照会が寄せられ、当協会としての見解もお求めになっての連絡を多数受けております。  

 地元の新聞報道、あるいは地元の会員などからの通信を総合して判断いたしますと、貴市のお考えになっている方向には強い疑義と不安を抱きました。当初のサンスクエア図書館の廃止・中央図書館への統合についての計画は見直しをされ、喜んでおりました。しかし現在お持ちの構想は、規模の大幅な縮小・数か所の公民館への資料の分散配置との内容で、これはサービスの低下にはならないとのお考えのようです。これには基本的な疑問があります。  

 いま日本の図書館事業は、市においては複数のサービス拠点を整備し、市民がどこに住んでいても身近に図書館サービスが受けられる体制の整備を、町村にあってはまずは図書館を設置し、さらに複数の図書館を整備する段階へと施策を進めることが重要であるとの認識で、全国的に努力を重ねているところです。図書館は、住民の豊かな暮らしを支える生涯学習社会の基幹的な事業であるとの理解がすすみ、相当の成果が蓄積されてきております。貴市も複数の図書館を以前から設置し、図書館事業について積極的な施策を採ってこられ、私どももかねてから敬意を表しておりました。  

 このたびの構想にある図書資料を市内各所に分散配置することと、図書館を設けることは決定的に異なることです。「図書館がある」ということは、単に本がそこにあるというだけでなく、専門職員による相談・援助がサービスとして提供され、市内だけでなく県内外、さらには大学図書館など他の館種の図書館をもふくむ図書館組織網を通じて、市民の求める資料を必ず提供しようとするサービスの総体を保障することです。単に少量の本があるだけでは、そこに今あるもの限りのごく限定された「図書」事業でしかありません。せっかく市民の厚い支持を受け、盛んに利用されているサンスクエア図書館を公民館図書室なみに縮小することは、たとえ分館として位置づけるとしても、貴市の図書館事業の大きな後退になると危惧せざるを得ません。  

 どうか今回の計画については再考いただき、市域全体におよぶ図書館サービスのいっそうの充実・拡大にご尽力いただきたく、本状をしたためた次第です。よろしくご検討くださるようお願い申し上げます。

                                以 上

(社)日本図書館協会
                             104-0033 東京都中央区新川1-11-14