2000年3月21日
東京都知事
  石原 慎太郎 様
(社)日本図書館協会
理事長 栗原 均

東京都立日比谷図書館の耐震工事の実施 および都立図書館資料費の増額措置を求める要望書

 

東京都立日比谷図書館は、都民や都内で働き学ぶ人たちにとって必要な財産であるだけでなく、全国の図書館にとっても重要な役割を果たし、日本の図書館の象徴的な存在となっています。  

日比谷図書館は、国の官庁と企業の本社機能が集中する都心のビジネス街にあって、資料・情報を提供する大規模図書館としての役割を果たし、年間90万人近い利用があります。さらに同館が行なっている児童資料の収集、保存、目録作成などの事業は全国的にも貴重なものです。それだけに、同館の老朽化について心配する声はかねてから多くあり、一昨年「第3次東京都長期計画」による改築実施困難との報に接したときは、各方面から「日比谷図書館の存続を」との声がいっせいに上がりました。当日本図書館協会も、日比谷図書館の拡充とサービスの継続を求める要望を出したところです。  

その結果、改築までの代替措置として耐震補強工事をすることになりました。調査、実施設計が終わり、来年度からいよいよ工事に入ることが期待されていました。ところが来年度予算案には、工事費は盛り込まれておりません。これでは日比谷図書館の利用者の安全が懸念されるとともに、全国の図書館事業の推進に少なくない影響をもたらします。  

図書館は、住民の生涯学習にとって欠かすことのできない基礎的な施設であり、機能を果たすものです。情報を得、学習する機会を保障する図書館の機能をより充実することが、家庭や学校、企業や市民活動をはじめ、すべての国民生活のなかから求められています。全国では脆弱な財政基盤にある町村においても、新たに図書館を設置しているところが続いております。これは住民の学習意欲、質の高い情報を得たいとする要求に応えようとする自治体当局の判断です。この努力は、未だ5割の市町村に図書館をもたない日本の実状を大きく変える原動力になっています。  

東京都は、東京市立日比谷図書館の先進的事業をふまえ、独自に近代公立図書館振興の途を拓いてきた伝統があります。戦後もそれぞれの時期に応じて、東京都全体の図書館振興のための方策や都立図書館の拡充に努めてこられました。しかしながら、都立中央図書館は開設以来四半世紀を過ぎ、資料の収蔵能力とサービス提供機能は限界に近づいています。都立図書館のサービスを維持・展開するためにも、日比谷図書館の改築は切実に求められています。  

日本の図書館事業をリードし、「国際都市」に相応しい図書館政策の推進を期待するものとして、日比谷図書館の速やかな改築の実施を、財政状況による暫定措置として耐震工事の実施を要望するものです。  

さらに加えて、資料費について述べさせていただきます。  来年度予算案では、資料費は前年度から15%も削減とのことです。増大する都立図書館の利用状況に逆比例するこの措置は、現在の利用者はもとより、将来の都民、利用者にとって必要とされる資料の確保が出来なくなることであり、多大な不利益を及ぼすものです。文化を保存する都立図書館として埋めることが困難な欠落をもたらすことです。   

都立図書館の都民一人当たり資料費は、全国の道府県のなかで中位くらいにあり、決して多いものではなく、利用の実態からするとむしろ少ないものと言わざるを得ません。  

さらに、東京都にとって出版産業は地場産業です。出版およびそれに関連する産業のほとんどが東京に集中しております。この不況のもとでは、図書館で購入する図書等の経費を増やし、出版産業に及ぼす割合を高めることは、格段に有効な施策と思われます。この点からも資料費の増額を求めるものです。  

来年度予算が議会において審議されている時期でもありますが、ことの重要性から、あえて要望するものです。実現に向けてご尽力くださるよう重ねて要望いたします。
                   

  1. 都立日比谷図書館の耐震補強工事の予算を措置し、工事を実施すること。
  2. 都立日比谷図書館の改築計画をすすめること。
  3. 都立図書館の資料費の増額を措置すること。
                                    
以 上