2010年3月
公立図書館の指定管理者制度について 社団法人日本図書館協会
日本図書館協会は、公立図書館の管理運営形態はそれぞれの自治体、および図書館の状況に合わせて創造されるべきもの、多様であるものと考えております。しかし指定管理者制度の適用は適切ではないと考えております。司書集団の専門性の蓄積、所蔵資料のコレクション形成は図書館運営にとって極めて重要なことですが、これは一貫した方針のもとで継続して実施することにより実現できます。図書館は設立母体の異なる他の図書館や関係機関との密接な連携協力を不可欠としています。さらに図書館は事業収益が見込みにくい公共サービスであり、自治体が住民の生涯学習を保障するためにその経費を負担すべき事業です。こういった点からも図書館は、地方公共団体が設置し教育委員会により運営される仕組みは極めて合理的です。
民間において図書館の管理を安定して行う物的能力、人的能力を有した事業者があるか、指定期間が限られているもとで事業の蓄積、発展ができるか、経費節減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く事態が招来しないか、など指定管理者制度にある本質的ともいうべき問題点があります。
このような状況を反映したものと思われますが、先の国会では公立図書館など社会教育施設の指定管理者制度について肯定する意見がありませんでした。“図書館への指定管理者制度適用は、住民サービスの向上、経費削減を図ることを目的とされているが、図書館サービスは、単に利用者数が増えるとか、開館時間数の延長、開館日数の増といった量的なものだけでは測れない性質のものがある、経費削減により安定した長期雇用が保障されず、短期的の職員の入れ替わりによる弊害が生じている、やはり職員の質の向上が大切だ”、との議員質問に対して、文部科学大臣は、“公立図書館への指定管理者制度の導入は長期的視野に立った運営が難しくなり、図書館になじまない、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、やっぱりなじまない”、と答弁しました(2008年6月3日 参議院文教科学委員会)。
この間指定管理者制度を導入した例をみると、十分な情報提供や説明がなされず、図書館協議会にも諮ることなく実施に移されたところが多くあります。住民団体が総務省に、住民への説明責任を果たすよう地方公共団体に徹底することを要請するほどです。私どもは、図書館は利用者、住民と図書館との共同によりつくりあげていくこと、連携協力により、それぞれの自治体の実状に応じた管理運営形態が創造されることを期待しています。 以上
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