日本図書館協会>図書館の自由委員会>声明・見解等>『文藝春秋』(1998年3月号)の記事について
「日図協,各館での主体的な対応を呼びかけ −『文藝春秋』『新潮45』発売にあたって−」 |
神戸の小学生殺害事件の供述調書を掲載した『文藝春秋』3月号が発売された2月10日,日図協事務局には各図書館・マスコミからの問い合わせが相次ぎ,対応に追われた。 この事件に関しては,昨年,容疑者少年の顔写真を掲載した『フォーカス』(7月9日号)が発売された直後の7月4日に,日図協として「見解」を表明したが(本誌97年8月号p.581),今回も同様の見解を出すのかどうかという問い合わせがほとんどであった。 もとより当該雑誌の取り扱いについては,「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」に照らして各館で対応を決めるべきことではあるが,図書館現場ではその取り扱いに苦慮するところも多く,マスコミからの問い合わせも多かったことから,図書館の自由に関する調査委員会(自由委員会)委員長,同関東・近畿両地区小委員会委員長等で検討の上,別掲の「参考意見」をまとめ,2月13日に都道府県立図書館に送り,さらにそれぞれの管内市区町村立図書館へも伝達されるようお願いをした。 この「参考意見」に対しては,@プライバシーの侵害等「問題ない」と断定的に言うのはいかがなものか,A開示されるべきではない資料を使って書かれたものを,公的社会教育機関である図書館が提供してよいのか,等の意見が図書館から寄せられており,意見は分かれている。そこで今回は「参考意見」というにとどめた。また「参考意見」としたもう一つの理由は,前回の「見解」が,日図協による図書館への「指示」と一部に受け取られたことによる。図書館の自由に関する問題で,協会が図書館に「指示」することはない。 なお『文藝春秋』3月号の図書館における取り扱いは,NHKによる全都道府県立図書館調査をはじめとするマスコミの調査が報道されている。日図協自由委員会でも各図書館の対応について何らかの調査をする予定である。 さらに『文藝春秋』3月号発売から1週間後,2月18日発売の『新潮45』3月号に,今度は堺市の通り魔事件のルポルタージュ「『幼稚園児』虐殺犯人の起臥」が掲載された。これには少年法の適用を受ける19歳の少年の顔写真と実名も明らかにされていた。この記事の取り扱いに関しての問い合わせも相次いだが,日図協としては,年齢が刑事裁判の可能な16歳以上という点を除けば,基本的には『フォーカス』の件と同じと考え,当該誌編集部による「小誌はなぜ“19歳少年”を「実名報道」し顔写真を掲載したのか」という弁明によっても,前回の「見解」(7月4日)を変えるつもりはない。 それぞれの図書館での対応が一様でないことはもちろんである。しかし,館内でどれだけ議論をしたか,その中で図書館の持つ社会的役割の重さをどう受け止めたかが,今後の館の運営にとって大切な意味を持つのではないだろうか。現場からのご意見をお寄せいただきたい。 (三苫正勝(みとま まさかつ):図書館の自由に関する調査委員会委員長
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「図書館雑誌」 Vol.92,No.3(1998.3)に掲載